最高裁判所第三小法廷 昭和39年(あ)1203号 判決 1965年9月28日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人小林哲郎の上告趣意第一点について。
所論のうち判例違反をいう点は、本件犯罪貨物が犯罪時において被告会社の単独所有であって、これが後に善意の第三者の所有に帰したため関税法一一八条一項二号二項により没収しないものであるのに対し、引用の判例の場合は、犯罪貨物が犯罪当時において既に第三者の所有物であるか、又は犯罪時にあっては犯人の所有物であったにしても、その後の転得者の善意悪意が不明なため、そのままでは没収権乃至は追徴権の存否を確定できない事案にかかるのであるから、両者は事案を異にするものというべく、論旨判例違反の主張はその前提を欠くものとして採ることができず、関税法一一八条二項が憲法三一条二九条に違反すると主張する部分は、その理由のないこと当裁判所の判例(昭和三七年(あ)第一二四三号同三九年七月一日大法廷判決、刑集一八巻六号二九〇頁)の趣旨に照らして明らかである。論旨その余の主張は、単なる法令違反をいうに過ぎず、適法な上告理由に当らない。
同第二について。
所論は、単なる法令違反とこれを前提とする事実誤認の主張に帰着し、刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。(なお、本件貨物が関税定率法-昭和三四年三月法律第五六号により改正されたもの-別表一四〇五号の三にいわゆる軌条に当る旨の原判断は正当である。)
また、記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって、同四〇八条により裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎)